
糖尿病・内分泌科では、糖尿病をはじめとした代謝疾患や、甲状腺・副腎・下垂体・副甲状腺など内分泌臓器の病気など、血糖値の異常やホルモンバランスの乱れに関する疾患を扱います。
近年、生活習慣の変化により増加の一途をたどる糖尿病は国民病とも言われ、甲状腺疾患も若い世代から高齢者まで幅広く見られるようになりました。これらの疾患は、体の基本的な機能である代謝やホルモンバランスに関わるため、全身に様々な影響を及ぼします。
のどが渇く、疲れやすい、急激な体重変化など、少しでも気になる症状がある方や、健康診断で血糖値や甲状腺の異常を指摘された方、家族に糖尿病や甲状腺疾患の方がいらっしゃる方など、不安なことがある方もお気軽にご相談ください。
糖尿病とは、インスリン分泌の不足や働きが悪くなることで、ブドウ糖が細胞にうまく取り込まれず、血液中のブドウ糖量が通常より高くなる状態のことを言います。
一般的に、空腹時血糖値が126mg/dL以上、または随時血糖値が200mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験(2時間値)が200mg/dL以上、HbA1c(ヘモグロビンA1c)が6.5%以上のどれかが当てはまると糖尿病型と診断され、別日の再検査で同様の結果になると糖尿病と確定されます。
糖尿病には、膵臓のβ細胞が破壊されてインスリンが分泌されない「1型糖尿病」と、インスリンの作用不足による「2型糖尿病」があり、日本人の糖尿病患者の約95%が2型糖尿病です。
自覚症状に乏しい糖尿病ですが、放置すると合併症のほか心筋梗塞や脳梗塞のリスクが大幅に高まります。
糖尿病の三大合併症は、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害です。
これらは高血糖状態が続くことで、血管や神経が傷つけられることにより発症します。
血糖が高い状態が長く続くと、網膜の細い血管が徐々に損傷を受け、詰まったり変形することがあります。
眼底の細い血管に動脈硬化が起こることで、網膜の出血から網膜剥離を起こし、視野の一部が急に見えなくなったり、失明する場合がありますが、病状がかなり進まないと自覚症状が乏しく、普段から定期的な眼科検診を受けることも大切です。また、糖尿病は白内障や緑内障の発症リスクにもなります。
血液をろ過する役割をしているのが腎臓の糸球体と呼ばれる場所です。糸球体は毛細血管でできているため高血糖が続くと、ろ過機能が壊れてしまいます。この状態が糖尿病性腎症です。
正常時には体に必要なタンパク質は体外にでないよう調整されていますが、糖尿病性腎症になると尿蛋白が出現し、進行するとネフローゼ症候群をきたします。顔や足のむくみ、血圧上昇などの症状を自覚する頃にはすでに腎機能が低下しており、さらに進行すると慢性腎不全から人工透析が必要になることもあります。
合併症の中で早期に現れるのが神経症状です。手足のしびれや痛み、感覚低下、立ちくらみなどが起こります。糖尿病性神経障害を放置すると、他の糖尿病の合併症(糖尿病網膜症、糖尿病性腎症)リスクになる場合もあります。
1型糖尿病の治療はインスリン注射、2型糖尿病では、食事療法・運動療法・薬物療法が基本となります。2型糖尿病では、まず食事療法と運動療法から始め、血糖コントロールが不十分な場合に薬物療法を検討します。
2型糖尿病の方に多くみられる肥満は、病状の進行や合併症の発症リスクを高めます。
適切なカロリー摂取と栄養バランスの取れた食事を心がけましょう。また、食べる順番や規則正しい食事、ゆっくり食べるなど少しの工夫を心がけることも改善につながります。
定期的な運動は、血糖値の改善やインスリンの効果向上に繋がります。激しい運動をしなくても、食後の散歩など軽い運動でも食後の血糖を抑えられます。また運動をする際は、準備運動や水分補給も意識して行いましょう。
食事療法、運動療法で十分な血糖コントロールにならない場合は内服薬やインスリン注射を併用します。内服薬とインスリン注射があり、患者様の状態に応じて選択します。
治療目標は、血糖値を適切な範囲に保ち、合併症の発症や進行を予防することです。患者様一人ひとりの生活スタイルに合わせた治療計画を立て、継続的なサポートを行います。
内分泌代謝疾患というのは、ホルモンの異常によって引き起こされる「内分泌疾患」と、脂質異常症や骨粗鬆症など代謝の異常によって引き起こされる「代謝疾患」の総称です。内分泌腺には、甲状腺、副腎、下垂体、副甲状腺などがあり、これらの臓器から分泌されるホルモンは体の成長や代謝、生殖機能などを調節する重要な役割を担っています。このホルモン分泌が過剰になったり不足したりすることで様々な症状が現れ、バセドウ病や橋本病がこれにあたります。
内分泌疾患の多くは、適切な診断と治療により症状の改善が期待できます。血液検査によるホルモン値の測定や画像検査により診断を行い、薬物療法などの適切な治療を行います。
甲状腺機能亢進症とは、甲状腺に対する自己抗体が出現し甲状腺を刺激することで、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患です。特に若い女性に多くみられ、身体の防御機能である免疫が、自分自身を標的にしてしまう自己免疫の代表的な病気です。
甲状腺ホルモンは新陳代謝を調節するため、過剰になると全身の代謝が異常に活発になります。主な症状として、甲状腺肥大、動悸、発汗、手の震え、イライラ感、眼球突出などがあげられます。
治療は抗甲状腺薬による内服治療が基本ですが、症状の改善が見込めない場合や副作用が強い場合には、放射性ヨウ素治療や手術療法を選択することもあります。
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの分泌が不足する疾患で、最も多いのは橋本病です。バセドウ病と同様自己免疫疾患の一種で、自分の免疫システムが甲状腺を攻撃することにより起こります。甲状腺に慢性的な炎症が起こるので「慢性甲状腺炎」とも呼ばれています。
主な症状として、疲労感、やる気が起きない、むくみ、寒がり、便秘、皮膚の乾燥、記憶力低下、体重増加などが現れます。
治療は不足している甲状腺ホルモンを補充する薬物療法が中心となります。適切な量のホルモン補充により、症状の改善と正常な生活の維持が可能です。治療は長期間にわたることが多いため、定期的な検査と薬の調整が必要です。
甲状腺にできるしこりのことを甲状腺腫瘍と言い、これには良性のものと悪性のものが含まれます。良性の甲状腺腫瘍では、腺腫様甲状腺腫(腺腫様結節)が最も多く、濾胞腺腫がそれに続きます。悪性の場合には、乳頭がん、濾胞がん、髄様がん、低分化がん、未分化がん、リンパ腫などがあり、このうち乳頭がんが全甲状腺悪性腫瘍の約9割を占めます。
甲状腺にしこりが生じると、頸部の腫脹、首周りの圧迫感、嚥下困難、嗄声(声のかすれ)といった症状が現れることがあります。腫瘍の診断では、まず触診により大きさや固さ、痛みの有無などを調べます。次にエコー検査を行い、場合によってはCT検査も行います。
副腎は腎臓の上にある臓器で、血圧の調整に大きく関与しています。下垂体からの刺激を受けることで副腎はコルチゾール、アルドステロン、アドレナリンなどのホルモンを分泌し、これらのホルモンバランスが崩れると様々な症状が現れます。
代表的な疾患として、コルチゾール過剰分泌による「クッシング症候群」、アルドステロン過剰分泌による「原発性アルドステロン症」、ホルモン分泌不足による「アジソン病」などがあります。症状は高血圧、低血圧、筋力低下、皮膚の変化、電解質異常など多岐にわたります。
診断には血液・尿検査によるホルモン測定や画像検査を行います。治療は原因により異なりますが、薬物療法や手術療法を適切に選択することで、症状の改善が期待できます。
脳の下にある下垂体は、成長ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモンなど多くのホルモンを分泌することで全身をコントロールしています。これらの機能に異常が生じると、各種ホルモンの分泌異常により様々な症状を引き起こします。
代表的な疾患として、成長ホルモンが過剰分泌による「先端巨大症」、小児で成長ホルモン分泌が低下すれば「低身長」、甲状腺刺激ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンが低下すれば倦怠感が起こり、甲状腺刺激ホルモンの過剰では動悸や不整脈、体重減少などがみられます。
糖尿病や高血圧などの基礎疾患には下垂体ホルモンの過剰分泌が原因となっていることもありますので、下垂体の検査を受けることも重要です。